好奇心の赴くままに。
column

【3Dプリント】ゲリラ豪雨でベランダを掃除する

2026-08-12column読了 約4分tan

【3Dプリント】幅95mmのベランダの溝を掃除するヘラは、売っていない

幅95mmの溝を掃除するヘラ。3Dモデルと、実際に印刷して溝に収めた現物

うちのベランダの先端には、細長い排水の溝があります。実測で幅95mm、深さ1.5mm。ここに、じわじわとヘドロが溜まります。

放っておいても暮らしに支障はありません。ただ、気になる。掃除しようとして、ここで詰まりました。この溝にぴったり入るヘラが、売っていないのです。(あるかもしれないが、そもそも探すのが面倒臭い・・)

tan

3Dプリンターを買ってから、こういう「売ってないから諦めていた」が、「じゃあ自分で作ればいいじゃん」になりました。

この記事を読んでわかること

  • 幅95mmの溝専用のヘラを、ノギスの実測値ひとつから3Dプリントで作るまでの流れ
  • 「市販品に自分を合わせる」から「自分の家に道具を合わせる」に切り替わる感覚
  • ベランダ掃除はゲリラ豪雨の日にやると最高、という生活の話

現状:ベランダの溝にヘドロが溜まる

まず、現場の絵です。赤いところが問題の溝。

ベランダ全体のスケッチ。先端に沿って走る細い溝にヘドロが溜まっている

断面にすると、こうです。

ベランダ溝の断面図。幅95mm・深さ1.5mmの浅い溝の底にヘドロが溜まっている

深さ1.5mmしかない、浅くて平べったい溝です。面で押し出せる道具が欲しい。つまりヘラです。

そしてホームセンターに売っているヘラは、だいたい50mmか、80mmか、100mmです。95mmは、ない。 (そもそも探しに行ってないので、実際どうか知りません。)

課題

  • ベランダを綺麗に保ちたい(それだけ)

支障がないのに気になる、という程度の課題です。でも、道具さえあれば5分で終わる話でもあります。

実施事項

  1. 3Dプリンターで、溝幅にぴったりのヘラを創る
  2. そのヘラを持って、ゲリラ豪雨のときにベランダを掃除する

なぜゲリラ豪雨のときに掃除をするのか

土砂降りになると、ベランダはどうせびちょびちょになります。

普通、ベランダを水で洗う掃除は「濡らす」必要があります。でも最初からびちょびちょなら、濡らす罪悪感がゼロ。おまけに水は上から無限に供給される。掃除の初期コストが、天気によって消えている状態です。

つまり、家にいるときにゲリラ豪雨が始まったら、皆さんがするべきことは、洗濯物を取り込むことでも、窓を閉めることでもありません。ベランダを掃除することしかないのです。

tan

干している洗濯物にカメムシの集団がついていたことがあります。自分は一生洗濯物を干さず、ドラム式洗濯機を使いたいと思っています。

創作手順

やったことは3つだけです。

  1. ノギスで溝の幅を測る(95.0mm)
  2. Claude Code に3Dモデリングを依頼する(日本語で会話するだけ。CADのGUIは触らない)
  3. 精査して、問題なければプリントする

3Dモデリングの手順そのものは前回の記事に書いたので、今回は「測って、頼んで、刷った」という粒度で流します。

設計で効いた判断だけ書いておくと、刃の幅は95mmぴったりにしていません。93mm、つまり片側1mmずつ逃がしてあります。溝は現実には真っ直ぐでも一定幅でもなく、蛇行するし、目地は出っ張るし、砂粒も挟まる。ぴったり過ぎると噛んで止まるからです。1mmの取り残しは2往復目で取れますが、入らないヘラは永遠に0点。外れても入る側に賭ける、という判断でした。

成果物

3Dモデル

美しいヘラが出来た笑

3Dプリント用のヘラのモデル。縦グリップ一体型で、刃先に向かって薄くなっている

  • 刃幅93mm・板厚5mm、先端は1.2mmまで削いだ片刃(下面はフラットなので、溝の底に沿って滑る)
  • しゃがんで押すので、握りは縦グリップ。掌が乗るドームで手が上に抜けない
  • グリップの上にφ7の吊り穴。ベランダのフックに掛けっぱなしにできる
  • 1部品・ネジゼロ・接着ゼロ・サポートゼロ(そのままベッドに置ける向きで設計してある)

印刷した結果

いい感じにできた。嬉しい。

印刷したヘラの全体。縦グリップと平らな刃が一体になっている

刃先のアップ。下面はフラット、上面だけ削いだ片刃です。積層痕がそのまま出ていますが、ヘドロを押すだけの道具なので問題なし。

ヘラの刃先のアップ。下面はフラットで、先端に向かって薄くなっている

そして本番、ベランダの溝に当ててみたところ。

ベランダの溝にヘラを差し込んだところ。刃が溝の幅にぴったり収まっている

入った。 片側1mmずつ逃がした93mmは、蛇行にも目地にも噛まず、すーっと滑ります。実測ひとつから起こした形が、そのまま現物として自分の家にハマる瞬間は、何度やっても気持ちがいい。

印刷コスト

約214円(フィラメント53.63g・印刷時間1時間54分)。

スライサーの結果画面。フィラメント53.63g、印刷時間1時間54分

ホームセンターで「たぶん入るだろう」というサイズのヘラを買うのと、だいたい同じ値段です。違うのは、こっちは確実に入るということだけ。


おわりに

3Dプリンターを家に持つ最大のメリットは、こういう地味に最適化された自分だけの道具を作れることに尽きるんじゃないかなと思っています。

幅95mmのベランダの溝を掃除するための最適なヘラって、皆さんどうやって手に入れますか。50mmのヘラで何往復もしますか。それとも「これぐらいならいけるんじゃないかな」と80mmを買い、100mmを買い、うわーこれちょっとでかくて入らないから斜めにして使おう、うわーでもそうすると全然うまく掃除できない、という機会損失を、いつまで続けるつもりですか。

ちゃんと買い物ができるなら、本当は自分も既製品を買って済ましたいです。

持つべきものは3Dプリンターである。ゲリラ豪雨のときにベランダを掃除したい同志に向けて。

あわせて読みたい【3Dプリンター】CADを一度も触らずに、Claude Code だけで3Dモデリングしてみている話(手法編)CADのGUIを一度も操作せず、Claude Code との対話だけで OpenSCAD の設計を書き、干渉体積・構造計算・断面検品の3チェックを通して Bambu A1 で刷る。その手法と、シミュレーション路線から撤退した正直な話。この記事を読む →

あわせて読みたい

つくったものを、博物館で見る26点の収蔵品を三つの館に分けて展示中
博物館へ ➔