
この記事を読んでわかること
- AI コーディングエージェントの「1セッションあたりの消費」を自分で計測する方法(Claude Code の場合)
- 実測15セッションぶんの生データ(合計・平均・内訳)と、そこから見えたコストの支配項
- 「測る仕組み」自体がバグっていて、半分しか測れていなかった話
「今月いくら」は分かるのに「このタスクいくら」が分からない
AI コーディングエージェントが従量課金の時代に入りました。使えば使うほどお金がかかる。それ自体は当然の話で、文句はありません。
困るのは粒度です。
管理画面を見れば「今月の使用量」は分かります。でも私が知りたいのはそこではなくて、
「この作業って何円だったんだろう?」
なんですよね。これが分からないと、次に似たタスクをやるときの見積もりが立てられない。「Code Apps のゲームを1本作る」のが3,000円なのか30,000円なのかで、やるかやらないかの判断は変わります。感覚で「けっこう使った気がする」と言っているうちは、判断材料になりません。人間の感覚ほど当てにならないものはないです。
というわけで、セッションが終わったら Claude Code 自身に「今回いくら使った?」を調べさせて、台帳に記録させる仕組みを作りました。
仕組み作りもClaude Code でやってます・・
仕組み: 3ステップだけ
① Claude Code のトランスクリプトを読む
Claude Code は会話のログを ~/.claude/projects/ の下に JSONL で残しています。この中に各リクエストの実トークン数(入力・出力・キャッシュ書込・キャッシュ読出)が全部入っています。
つまり計測に外部 API は要りません。ローカルのログを集計するだけです。Python スクリプト1本(400行弱)を書いて、--json を付けると集計結果が返ってくるようにしました。
② 公開レート × 実トークンで推定コストを出す
スクリプトの先頭にモデルごとの公開単価表を持たせて、トークン数と掛け算します。
ここは正直に「推定」と呼んでいます。請求額そのものではありません。定額プランで使っていれば、実際の請求はこの数字と関係なく一定です。それでも意味があるのは、「このタスクにどれだけ食わせたか」の比較指標としては完全に成立するからです。3,000円相当のタスクと30,000円相当のタスクの差は、間違いなく実在します。
そして重要なのは、トークン数は不変量、円は変数だということ。だから台帳には円だけでなく生のトークン数を必ず保存しています。単価が改定されても、為替が動いても、トークンの実測値さえ残っていればいつでも計算し直せる。逆にこれを保存し忘れると、過去のデータが二度と再計算できないゴミになります(後述しますが、Claude Code はここで一度やらかしています)。
③ Notion の台帳に記録する(人間には、機械に分からないことだけ聞く)
集計できたら、そのまま Notion のデータベースに1行として書き込みます。
ここの設計で気をつけたのは、AI が自分で分かることを人間に聞かないということ。作業内容も、カテゴリも、成果物のパスも、達成度も、その会話をやっていた本人(AI)が一番よく知っています。聞く必要がない。
自分でやったことぐらい、自分で記録しろよ。 という方針です。
なので質問は1ラウンド・最大3問に絞りました。
| 聞くこと | 理由 |
|---|---|
| カテゴリと規模はこれでいい? | AI の自己申告が甘くなりがちなので人間が最終確認 |
| これ、自分でやったら何分かかった想定? | ここだけは人間にしか答えられない |
| プロジェクトはどれ? | 台帳の串刺し用 |
2つ目が本丸です。「人力想定時間」は AI には絶対に分からない。私が同じものを手で作ったら何時間かかるか、を知っているのは私だけです。これに時間単価を掛けると人力換算の金額が出て、AI コストと並べれば ROI になります。
「自己申告なんて当てになるの?」と思われるかもしれませんが、じゃあ何を当てにするの? 数値化しようとすると、何もしようとしない人に突っ込まれますが無視します。 完璧よりもASAP(As Soon As Possible )という方針ですね。
なお為替レートと時間単価は登録時のスナップショットとして各行に焼き込んでいます。ライブ為替は取りに行きません(外部通信ゼロ)。こうしておくと、あとからレートを変えても過去の記録が動かない。過去の数字が勝手に書き換わる台帳は、台帳として信用できないので。
実測データ: 15セッションで約15万円ぶん
ここからが本題です。実際に記録が溜まったので、中身を晒します。
トークン計測ありの15セッション(2026年7月・Claude Code のみ)の合計がこちら。
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| 推定コスト合計 | $934.05(約 ¥152,600) |
| 1セッション平均 | 約 ¥10,200 |
| 最小 | ¥1,587(12分・Notion への画像添付作業) |
| 最大 | ¥20,769(539分・ゲーム1本を企画からv3まで) |
| 出力トークン合計 | 約 256万 |
| キャッシュ書込トークン合計 | 約 3,530万 |
| キャッシュ読出トークン合計 | 約 7億8,840万 |
| 素の入力トークン合計 | 約 1万9,000 |

これが実物の台帳です。1セッション=1行。金額とトークンの列はぼかしていますが、右の「ROI倍率」だけ出しています(26.6倍とか5.2倍とか)。
分かったこと: コストの支配項は「書いた量」ではなく「往復の数」
つまりこういうことです。私が実際にタイプした指示や、AI が書いたコードの量なんて、コスト全体から見れば誤差でしかない。
支配しているのはキャッシュ読出、すなわち「会話の履歴を毎ターン読み直す量」です。ターンを重ねるほど履歴は長くなり、その長い履歴を毎回読み直すので、コストは往復回数にほぼ比例して雪だるま式に増える。
これは見積もりの立て方を根本から変えます。
- ❌ 「このアプリは2,000行くらいだから高い」
- ⭕ 「この作業は何往復かかりそうか」
実際、台帳の申し送り欄にも同じ結論が繰り返し書かれていました。往復を減らす手はハッキリしていて、着手前に仕様と前提を書き切ること。曖昧なまま走り出して「そうじゃなくて」を5回やるのが、一番高くつきます。
ROI: 人力換算と並べてみる
「自分でやったら何分?」を答えた9セッションだけを抜き出して、時間単価6,000円で人力換算するとこうなりました。
| 金額 | |
|---|---|
| 人力でやった場合(想定) | ¥1,437,000 |
| 実際の AI コスト | ¥93,569 |
| 差 | 約 15.4倍 |
もちろんこの分子(人力想定時間)は私の自己申告なので、厳密な数字ではありません。「自分でやったら80時間」と見積もったゲーム開発が、本当に80時間で終わったかは誰にも分からない。そもそもTypeScript 書けないから実装することすらできない。
ちなみに「Claude Code と実際どう作業しているのか」は、以前ひとつのアプリを題材に、工程ごとの所要時間つきで書いています。人力想定分を見積もるときの感覚は、だいたいこのへんから来ています。
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それでも、自己申告を書いて、ROIをしつこく追いかけてみることで、「高いから使うのやめよう」ではなく「やる価値があるかどうか」「やった結果どれだけの利益を生むのか」「投資対効果はどれぐらいでそうなのか」という判断のための材料を作ることができ始めました。
いちばんの学び: 「測る仕組み」がバグっていた
さて、ここまで書いておいて何ですが、この台帳、途中まで半分しか測れていませんでした。
私は最近、Fable に統括を頼み、タスクはサブエージェント(別のAIに実装を委任する仕組み)に投げる進め方をよくやります。統率役の Fable が仕様を固めて、実装は別のエージェントに丸ごと任せる、という分担です。
で、そのサブエージェントの会話ログは、親のログとは別ファイルに書かれていたんですね。私の集計スクリプトは親のログしか読んでいなかった。つまり実装作業のコストが丸ごと計上外になっていました。
修正して再集計したら、既存11件の合計が $396 → $798。きっちり2倍でした。
「直さんかい」と修正指示したので、もう大丈夫になりました(たぶん)
おまけ: 実は最初、専用アプリを作っていました
この台帳、最初は Power Apps(Code Apps)+ Dataverse で専用アプリとして作っていました。ダッシュボードも見積もり画面も作り込んで、それなりに良い出来でした。
でもNotion に引っ越しました。
個人のDBとして他のデータとの連携も考えた結果です。あとは、Claude Code に書き込ませるので、入力画面が必要ない。つまり、アプリである必要がないと判断したためです。
作ったものを畳む判断は毎回ちょっと寂しいんですが、「これはデモとして完成、蓄積の本籍は別」と切り分けられたのは、我ながら良い判断でした。
組織で使うならCode Apps ×Dataverse でも良いかもしれないですね。
「このデータをどこに置いておくか」は、前にも一度まじめに考えていました。こちらはクラウドから毎晩手元へ写しを取る話です。
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凍結した Power Apps 版。作り込んだぶん、見た目はこっちのほうが好きです(件数と合計が本文の数字より多いのは、デモ用のシードデータが混ざっているためです)。
まとめ
- AI 従量課金時代に効いてくるのは、「使った量を測れる側に回る」こと
- 計測はトークン(不変量)で保存する。円は単価と為替で後から何度でも計算し直せる
- コストの支配項は書いた量ではなく往復回数。見積もりは行数でなく往復数で立てる
- AI に自分の消費を自分で報告させると、記録のコストがほぼゼロになる。人間が答えるのは「自分でやったら何分か」だけでいい
「AI にいくら使ったか分からない」という状態は、思考停止としてはとても居心地がいいんですが、判断が全部“感覚”になります。とりあえず測り始めると、意外と怖くなくなります。
皆さんもぜひ、自分の消費を測ってみてはいかがでしょうか。
(なお、この記事を書いているセッションのコストも当然この台帳に記録されます。「クレジット消費ログの記事を書いた」という行が積まれていくの、なかなかシュールでいいですね。測ることを測ることを測る、みたいなことにならないよう気をつけます。)


